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長野地方裁判所 昭和57年(ワ)24号 判決

原告 森谷武雄

被告 河野常男

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

理由

原告は、昭和五六年一二月二八日、長野簡易裁判所に支払命令の申立をし、同裁判所は、昭和五七年一月一四日支払命令を発し、同年一月二八日、右支払命令正本は、被告に交付送達されたが、同年二月四日、被告から右支払命令に対し適法な異議申立がなされ、当裁判所に訴訟係属したものである。右により、原告は、「被告は原告に対し金七五万円及びこれに対する昭和五六年一二月二六日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、第一回口頭弁論期日は、昭和五七年五月三一日午前一〇時と指定されたが、被告は、支払命令申立書記載の住所から転居しており、転居先不明で呼出状は不送達となつた。その後原告は、同年五月二四日付上申書で被告の住所を補正し、右口頭弁論期日が同年六二一日午前一〇時と変更され、執行官送達の方法によつたが、同様に呼出状は不送達となつた。その後昭和五八年二月二三日当裁判所は、原告に対し、命令送達の日から一四日以内に被告の住所を補正すべき旨命じたが、原告は右期間内にこれを補正しなかつた。

右のように、被告に支払命令が送達されその異議申立によつて訴訟係属が生じた後、被告の住所が不明となり、期日呼出状が送達できなくなつた場合、原告が被告の住居所その他送達すべき場所の補正を命じられながらこれに従わず、何ら住所の補正の手続も公示送達の申立もしないときは、裁判所は、職権で公示送達の要件を調査したうえ公示送達をなすべきことを裁判所書記官に命ずることなく、民訴法二〇二条を準用して判決をもつて訴を却下することができると解するのが相当である。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 北沢貞男)

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